社会保険労務士試験の難易度を法律系資格と合格率から解説

社会保険労務士(社労士)の難易度は資格試験の中でも高めです。

なぜ社労士試験の難易度が高いのか、法律系資格を数多く取得している(社会保険労務士、司法書士、行政書士、宅地建物取引士)スペシャリストが説明します。

目次

社労士の難易度はどれくらい?他の法律系国家試験と比較

一般的に社労士試験は多くの資格試験の中でも難易度の高い試験に分類されていますが、次のように合格率と試験内容から主な法律系国家試験(宅建、行政書士、司法書士)と比較すると、難関試験であることがわかります。

合格率では、社労士は例年6%前後であるのに対して、宅建は15%前後、行政書士は10%前後、司法書士は4%前後となっています。

社労士の合格率は他の試験と比較しても低く、司法書士と同レベルの試験と位置づけられます。

試験内容や試験時間などを、他の資格と比較してみました。

試験形式合格基準試験時間
社労士5肢択一式(70問)と選択式(10問)択一式・選択式それぞれの総得点および各科目が合格基準点以上290分
宅建4肢択一式(50問)総得点が合格基準点以上120分
行政書士5肢択一式(54問)総得点および一般常識科目が合格基準点以上180分
司法書士5肢択一式(70問)と記述式(登記申請2題)総得点および択一式・記述式が合格基準点以上300分

社労士の試験内容は他の試験と比較しても厳しく、司法書士の次に難しい試験と位置づけられます。

合格率から見る社労士の難易度

社労士試験は2015年に2.6%、2016年も4.4%と極めて低い合格率が続きましたが、近年は6%程度(2023年は5.3%)で推移しています。

合格率が毎年10%を下回っているため、難易度が高い試験といえます。

合格率が低い理由は、各科目にも合格基準点が設定されていること、しかも科目が多いことにあります。

社労士の試験形式は選択式と択一式があり、それぞれに総得点と科目別得点の合格基準点が設定されていますが、科目数は、選択式が8科目、択一式が7科目あります。

したがって、各試験形式の総得点と科目別得点の合計17の合格基準点をすべて突破しなければなりません。

このように、合格基準点の細かな設定と科目数の多さが重なって、社労士の難易度が高くなっています。

合格するには各科目をまんべんなく得点する必要がありますが、科目ごとに広範な知識を合格レベルで保有することは容易ではありません。

社労士各科目の難易度

社労士試験は選択式と択一式で出題ウェイトは異なります。

出題科目
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険料徴収法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識(以下、労一)
  • 健康保険法
  • 国民年金法
  • 厚生年金保険法
  • 社会保険に関する一般常識(以下、社一)

合格するには、難易度の高い科目も合格基準点を下回らないよう基礎を固めた上で、難易度の低い科目で得点を稼ぐことが必要です。

科目別の合格基準点は、原則として、選択式は6割(5点満点中3点)、択一式は4割(10点満点中4点)とされています。

ただし、一定の場合には合格基準点を引き下げる救済措置がとられており、合格率が6%台に回復した2017年以降6年間の救済科目は、選択式では、社一が3回、労一と国民年金法と健康保険法が各2回、雇用保険法が1回、択一式では厚生年金保険法が1回(2017年)となっています。

このことから、選択式では、出題範囲が広い労一と社一の一般常識科目、そして法改正で制度が複雑化している国民年金法などの社会保険関係科目の難易度が高いといえます。

一方、択一式では、合格基準点も低く、労一と社一とで1科目のため難易度が高い労一を社一でカバーして基準点を確保できます。

救済措置はほとんどとられていませんが、択一式でも同様に、国民年金法などの社会保険関係科目の難易度が高く、労働関係科目は総じて難易度は低く、労働保険料徴収法は得点源にでき、労災保険法と雇用保険法も比較的得点しやすいといえます。

社労士試験で不合格になる人の特徴 

社労士は知識を問われる試験ですから、正しい方向で学習を続けていけば必ず合格できる試験です。

逆に、次のような場合には合格するのは難しくなります。

正しい学習計画が立てられていない

社労士試験は試験範囲も広いため、試験日から逆算して学習計画を立てて、着実に学習を進めなくては合格水準には到達できません。

しかも、学習時間に得点が比例しない科目や、年金科目など理解するのに時間がかかる科目もありますので、メリハリをつけた正しい学習計画が必要です。

試験の傾向をふまえた効率的な学習方法がとられていない

社労士試験は、試験範囲が広いうえに、科目ごとにも合格基準点があるため全科目をまんべんなく学習しなければならず、すべてを網羅するには時間がかかりすぎます。

そこで、効率的に学習して合格するには、合格水準の目安である7割程度を得点できるように、試験の傾向を分析し、合格に必要な重点事項に絞り込んで、繰り返し学習することが重要です。

法改正や動向など最新の情報に対応できていない

社労士試験では受験年度の4月までに実施された法改正内容や公表される統計情報からも出題され、最新の情報を収集し取捨選択した上で対策する必要があります。

それには相当な労力が必要ですが、法改正や統計なども確実に把握していなければ合格することはできません。

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