この記事では司法試験を独学で合格するために必要なノウハウを紹介します。
私自身は法学部からロースクールに進学して初回受験で司法試験に合格することができました。
そこでこの記事の内容は皆さん日々の学習の参考になる内容となっていると思いますのでぜひ最後まで目を通してみてください。
司法試験には4割以上が合格している
最初に直近の司法試験の合格率について簡単に紹介しましょう。
- 令和3年(2021年)に司法試験の受験者は「3424人」(途中欠席32人)です。
- 同年の司法試験の最終合格者数は「1421人」です。
受験者数に対する合格者については4割以上の41.5%もの人が合格していることが分かります。
これについては「たまたま2021年の合格率が高かったのでは?」と思われる方もいると思いますのでそれ以前のデータも検討してみましょう。
- 令和2年(2020年):39.2%(受験者数は3703人、最終合格者数は1450人)
- 令和元年(2019年):33.6%(受験者数は4466人、最終合格者数は1502人)
- 平成30年(2018年):29.1%(受験者数は5238人、最終合格者数は1525人)
これを見ると合格者数に大きな変化は少ないものの毎年受験者数が徐々に減少してきていることが分かります。
受ける人数が減っているのに合格者数が変わらないということで司法試験は年々受かりやすくなっていると捉えることもできます。
ただ、司法試験には受験資格があります。
それでは具体的に司法試験とはどのような試験なのでしょうか。
司法試験は8科目で構成されている
司法試験は大きく短答式と論文式の試験で構成されています。
そして科目については
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 会社法
- 民事訴訟法
- 刑法
- 刑事訴訟法
- 選択科目
これらの8つの科目を受験しなければなりません。
短答式試験
短答式試験(合計175点)は以下のような試験科目・点数で構成されています。
- 憲法(50分) 50点
- 民法(75分) 75点
- 刑法(50分) 50点
まず司法試験に合格するには短答式試験を突破する必要があります。
短答式試験・論文式試験には合格最低ラインがあり、このラインに達していない科目がひとつでもある場合には一発で不合格となってしまいます。
短答式試験で約2割の受験生が最低ラインに足りずに不合格になっていることが分かります。
そして、短答式で「足切り」になった場合には論文式試験を採点すらしてもらえないのです。
短答式試験の対策
短答式試験はいわゆるマークシート方式で正解となる選択肢を選ぶ択一試験です。
もっとも重要な対策としては「過去問」を何度も解くことです。
短答式については試験直前期まで対策をしない受験生もいます。
しかし、ご自身が短答式の対策が必要か否かを知るためにもできるだけ早く短答式試験の過去問を解いてみましょう(制限時間も短いのであっという間です)。
そのうえで対策として科目別の「肢別本」といわれる短答式の過去問を集めたテキストを何周も回して条文の基礎学力を鍛えることが重要でしょう。
短答式の訓練で得た知識は当然論述式でも役立つものです。
短答式は憲法・民法・刑法の3科目を受験しなければなりませんが、この中で圧倒的に学習量が多いのが民法です。
民法は他に比べて条文数が多く短答式の学習により民法の基礎体力を鍛えることができます。
短答式については基本書と条文をベースに間違えた箇所・知らない箇所をつぶしていくという作業がメインとなります。
インプットの大まかな流れとしては、「まず条文の存在を知る」→「条文の意味(論点)を知る」→「論点について判例解釈論を知る」という順番を意識して吸収していくことが大切です。
論文式試験
司法試験の論文式試験(合計800点)は以下のような科目で構成されています。
- 公法系(憲法・行政法) 200点
- 民事系(民法・会社法・民事訴訟法) 300点
- 刑事系(刑法・刑事訴訟法) 200点
- 選択科目 100点
制限時間はひと科目につき2時間の長尺となっています。
論文式試験の対策
以下では私が行った論文式対策をご紹介します。ご自身の勉強スタイルに取り入れる余地がある場合には参考にしていただけると幸いです。
論文式試験の対策としてはロースクールの授業を軸に基本書と判例百選を使用して独自の「まとめノート」を作成していきました。
この「まとめノート」については選択科目以外の全科目について作成しました(選択科目については単純に時間が足りませんでした)。
私が意識してノートにまとめたものは「条文番号」、「文言とその定義」、「解釈論と判例解釈」「判例が示した考慮要素」です。
これらを「答案作成に使える形で試験会場に持っていく」ということを目標に作成しました。
特に学習を続けていけば考慮要素などは内容が似通ってくることが分かりますし現場で復元できれば説得的な答案に仕上がります。
ロースクールの授業を基軸として作成したことで定期試験のたびにノートの精度がそれなりに上がります。
私自身ロースクールの授業を司法試験本番のためにどう役立てるかを考えて受講していました。
受験生の中には予備校の講座を利用している方もいらっしゃると思いますが基本的な学習姿勢としては共通していると思います。
そして論文式試験の対策として最も有効なものも「過去問」研究です。過去問についてはできるだけ早期に触れるに越したことはありません。
過去問は「リソースの限られた神聖なもの」のような取り扱いをしてなかなか手を付けない学生も多いのが実情ですが、心配せずとも過去何年分もありますし何度も繰り返し解いて練習することになりますので上記のような心配は無用です。
できるだけ早く過去問にチャレンジして今の自分の実力が合格レベルに達していないことを理解して「どうすれば合格レベルに近づけるか」を考える作業こそが試験勉強であると理解してください。
そして過去問を解いた場合には法務省のホームページで公表されている「出題の趣旨」「採点実感」にも目を通しましょう。
特に「出題の趣旨」は、試験を作成した人が受験生に解答して欲しい「項目」を開示したものですので試験問題と同等に重要な情報が書かれています。
すべての「項目」を論じることは不可能ですので、「どの項目は絶対に落としてはいけないのか」、逆に「落としても大きく減点されない項目はどれか」ということを研究してください。
選択科目はどう攻略すべきか
論文式試験の中には選択科目があります。選択科目は受験日程ではじめに受験する科目ですので、ここで出鼻をくじかれると以後のスケジュールに精神的なダメージを与えるおそれもあります。
選択科目としては、①倒産法、②租税法、③経済法、④知的財産法、⑤労働法、⑥環境法、⑦国際関係法(公法系)、⑧国際関係法(私法系)の中からひと科目を選択する必要があります。
「この科目を選択すれば受かりやすい」ということはないと思いますが、科目によっては抑えておくべき判例が多いなどの特徴がある可能性はあります。
参考までに合格者のなかで選択している受験生が多い選択科目トップ5を紹介しましょう。
1位 労働法 455人(32.02%)
2位 経済法 277人(19.49%)
3位 倒産法 202人(14.22%)
4位 知的財産法 193人(13.58%)
5位 国際関係法(私法系) 122人(8.59%)
受験人数が多いということはそれだけ競合が多い可能性がありますが、受験対策の需要が高いということで参考書やテキスト・予備校本が充実している可能性もあります。
迷われる方は自分がどのような分野に興味があるのかで選択するので問題ないのではいでしでしょうか。
ちなみに私は労働法を選択しました。
労働法はいずれの年も受験者が多くその分自分に合うテキストも多いと思い選択しました。
また労働法は判例解釈の理解が重要だと思いましたので判例集に書き込み、判例の規範を単純化した付箋を各ページに貼り付けて暗記に利用しました。
他の科目のようにまとめノートを作成する時間はなかったですが、判例集に情報を集約化することで乗り切ることができました。
予備試験(口述試験の対策)
ここまで解説した試験対策については「予備試験」の短答・論文式試験にも通用するものだと思います。
ただし予備試験には「口述試験」という特別な試験類型がありますので最後に口述試験の対策についても触れたいと思います。
口述試験とは面接方式で実施され、主査と副査の2人の面接官が法律実務基礎科目(民事・刑事)について出題し受験者は口頭で質問に解答していくという試験形式です。
試験官が事例を口頭で読み上げ事例に関連する問いが出題されますのでそれについて受験者が答える形で進められます。
口述試験では六法を参照することは認められています。
しかし、基本的なことは既にインプットされた状態で受け答えができることが望ましいでしょう。
そのため短答式で鍛えられる条文に関する基本的な知識は口述試験でも有効です。
口述試験と聞くと多くの人が緊張すると思いますが、ここで令和3年の口述試験の結果を紹介しておきます。
・令和3年の予備試験の口述試験の受験者は476人でした。
・口述試験の合格者は467人でした。
口述試験については受験者の98%が合格しています。
このことから口述試験の対策が不要であるとは決して言えませんが、論文式・短答式試験の対策でしっかり基礎ができていれば口述試験に対応する学力は培われると思います。
落ち着いて聞かれたことに答えることがなによりも大切です。
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